妹を溺愛する兄が先に結婚しました
当の本人は、喧騒(けんそう)の中を何事もなかったかのように歩いていく。


時原の後を追いかける高村の、

「ちょっと時原!俺が怒られるっ!」という叫び声が耳を突き抜けて……。


「なんかエロッ!」

女子たちの興奮を聞き流して。


「静也ってあんなだっけ?……結咲への距離感バグってない?」

という爽の言葉を聞きながら。


私は力が抜けるようにその場にしゃがみ込んだ。



なんなのもうっ……。

私の心を揺さぶる天才か?


振り回しているとしか思えないのに。


……時原はいつだってまっすぐだから。

弄んだり駆け引きをしたりしないから。


だからこそ、時原の言葉ひとつひとつが私の中に入ってくるんだ。


バグじゃないよ、エラーだよ。



***



「み、三つ葉……、気にすることないよ」


「う、うん……」


「ほら。時原先輩って真崎先輩に懐いてるみたいだし、それだけだよ」


「…………」



***



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