妹を溺愛する兄が先に結婚しました
声のした方を見ると、

10番のユニフォームを着た他校の男子が、険しい表情を向けていた。


誰……?

というのが率直な感想。


けど……。


「折部、どうした?」


隣にいた友達らしき子の言葉にハッとする。


名前に聞き覚えがある。

というか、たぶん一生忘れることのない名前。


「え、折部くん……?」


私の初恋の人。



名前を聞くまで気付かなかったのも無理ない。


中1の時に引っ越してそれきりだと思っていたし、

何より見た目が変わった。


背は伸びて、顔つきも身体つきも男らしくなっている。


声変わりする前のあどけない頃しか知らなかった。



険しかった表情は一転。

「先に行ってて」と友達を追い払った折部くんは、表情を柔らかく崩した。


「やっぱり真崎か。この高校なの?」


……折部くん、こんなに穏やかな表情をする人じゃなかった。

ほんとに何から何まで変わって、ビックリ。


「う、うん……。折部くんはなんでここに……?」


「俺は高校入学と同時にこっちに戻ってきて、今、北高に通ってるんだ」


「そうだったんだ……」



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