妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「「…………」」

保健室に着いて、薬のツーンとした匂いを感じながら再び固まる。


空気をピリつかせたのは、私。

顔が引きつっているのは、私の瞳に映る──奴。


キーンコーンカーンコーン──。

ただならぬ空気が漂う中、無情にもチャイムが鳴り響いた。


「……なんでいるの?」


「それは俺のセリフ」


保健室の丸い椅子に座り、腕と足を組んで不服そうにする。

そこにいたのは、趣味はストーカー、特技は神出鬼没の──兄だった。



私と時原を見るや否や顔を引きつらせた兄だったが、今度は唐突に表情を消した。


勢いよく立ち上がって、ドア付近で立ち尽くしていた私たちに近寄り……。

ぐいっと私の手首を持ち上げた。


「なにかな、コレは?」


“コレ”が示す先には、時原の手首を掴んだままの私の手。


……あ、忘れてた。


言われて咄嗟に離す。



「どうしたの?誰か来た?」


ちょうどその時、保健室の奥から柔らかい声がした。


50代後半の小柄な女性が姿を見せる。

学校の癒しこと保健室の先生だ。


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