妹を溺愛する兄が先に結婚しました
兄は、私を抱き寄せて。


「俺の妹が急病みたいでーす」

と声色を変えて保健室の先生に答える。一方で、


「ということでお前はすぐ戻れ」

時原には冷たい声で吐き捨てた。


それはもう、別人かと疑うほどの変わりよう。


「……って、ちがーう!逆、逆!私じゃなくて、時原が用あるの!」


兄を押し退けて反論した。



保健室には他に誰もおらず、ベッドが空いていたので寝かせてもらえることになった。


文化祭準備に変更になったとはいえ一応授業中なので、私は、時原がベッドに入ったのを確認してすぐに保健室を出た。


何よりも、突き刺さる兄の視線から逃げ出したかった。



***



6時間目が終わって、そのまま解散。


今日は部活が休みなのでこのまま帰宅できる。

……と、その前に。


保健室から戻ってこない時原の様子を見に行くことにした。


帰り支度を済ませ荷物は置いたままにして、教室を出る。


他のクラスはまだ帰りのホームルーム中なのか、廊下は人が(まば)らで静か。


早退する時のようなちょっとした特別感を抱きつつ、4階の教室から1階にある保健室へ行く。



< 258 / 447 >

この作品をシェア

pagetop