妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「もう大丈夫なの?」


「うん、大丈夫」


上半身を起こしながらそう答えた時原の声は、寝起き特有の甘ったるさがない澄んだ声だったので、起きてからそれなりに時間が経っていることがわかる。


サボり……?

なんて思うと、ちょっと微笑ましくなる。


面倒くさがりだし無気力だし、たまにサボることがあるんだよね……、時原って。

そのサボり方が程よいから先生に目をつけられることもない。


案外、上手に生きているのかもしれない。



それはそうと……、


「帰らないの?」


なかなかベッドから出ようとしない時原に、首を傾げる。


そんな私を見て、時原は囁く声で言った。


「俺さ……、真崎を待っていたのかもしれない」


それは私に向けた言葉というより、納得のいく答えを見つけて思わず呟いてしまったという感じだった。


聞き逃しても良かったけど、確かに私の耳に届いたから。


「……お迎えを待っていたの?」

尋ねてみた。


けど……、

時原は首を横に振った。


「座って」


ベッドをポンポンと叩いてそう促されたので、言われた通りにベッドに腰を下ろす。


背中を向けたまま話すのはどうかと思い、顔だけ振り返って時原を見る。



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