妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「嫌な夢を見たんだよね」


「どんな夢?」


「……真崎がいなくなる夢」


「えっ⁉」


まさかの答えに声を上げてしまった。


私がいなくなるって……、

「え、私が死ぬ夢?」


真面目にそう聞いたら、時原は吹き出すように笑った。


「ふっ。違う」


「じゃあ……、神隠しとか?」


「んー。ていうか、俺の前からいなくなるの。

それで起きたら真崎がいないから……。

戻ってきてくれないかなって思って、真崎を待ってた」


そういうことか。

良かった、死ぬ夢じゃなくて。


たとえ他人の夢でも勝手に殺されるのは悲しい。


……あっ、でも、時原の夢に出られるならなんでもいいかも。



「いなくならないよ」


笑みを零して答える。


私がいなくなる夢を“嫌だ”って思ってくれたのが嬉しかった。


夢は記憶の整理と言うけれど、夢を見るくらい私の存在が時原の中で大きくなっているなら、それこそ夢心地気分。


……チョロいな、私。

なんて頬を緩ませていると。



不意に腕を掴まれて、ぐいっと引っ張られた。


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