妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「──っ!」


磁石のように引き寄せられて。

ギシッとベッドが大きく(きし)む。



気付けば、

時原の胸の中にいた。



……え、えっ⁉

ビックリしすぎて声が出ない。


背中に手が回って抱き締められる。

その力強さに(あらが)えない。


胸の鼓動、熱い体温、鼻を掠める香り。


肌で感じるすべてに胸が高鳴る。

どころか、心臓が飛び出そう。


「え、っと……、ときはら、どう──」

とその時。



「失礼します。

……あの、2年の時原先輩がいるって聞いたんですけど」


カーテンの外から聞こえてきた女子の声に、言葉を切った。


誰か来た……?


「いるわよー」


足音がこっちに近付いてくる。


やばい!見られたらマズい……。

途端に焦りが現れる。


悪いことをしているわけではないんだけど、保健室のベッドで抱き合う男女って。

……いかがわしすぎる。


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