妹を溺愛する兄が先に結婚しました
その後もゆみちゃんと他愛ない話をしていると、ふと。


「それで宣伝係がさぁ……」


ゆみちゃんが言葉を切ったので、彼女の視線を追うように振り返った。


いつの間にか後ろに折部くんが立っていて、


「真崎、ちょっといい?」

私だけに聞こえるように声を落として言ってきた。


真琴たちはまだテーブルでお茶しながら談笑中。


私だけに用がある素振りなので、ゆみちゃんに一言断って教室を出た。



「どうしたの?」


「話があるんだ。静かなところない?」


「静かなところって言われても今は文化祭中だし……。

人通りが少ないところなら、つきあたりの階段かな」


「そこでいいよ」


ドキドキしながら答えて、私たちは階段の踊り場へ移動した。



文化祭で使わない教室は鍵がかかっている。

ここの階段は、全く人が通らないわけではないけど、空き教室に挟まれているせいか人通りが少ない。


……話ってなんだろう。


緊張した面持ちで言葉を待っていると、向き合った折部くんがふっと笑みを零した。


「緊張してんの?」


「そりゃ、してるよ……。何を言われるのかなって」


「ふーん。じゃあ、なんの話をしようかな」


……は?

と思わず声に出そうになる。


< 279 / 447 >

この作品をシェア

pagetop