妹を溺愛する兄が先に結婚しました
……よくやった、私。よく守った。


息を大きく吐きながら、さっきの出来事を思い出す。



『嘘つき』

そう言って、キスしようとしてきた折部くん。



あまりに突然のことで思考が停止しかけていた私だけど、頭より先に手が動いていた。


唇を奪われるより先に、反射的に自分の口を守った手。

その甲に、折部くんの唇が触れた。


思い出すだけでもぞわっとする感触。


でも、ファーストキスはなんとか守った。



『すげぇ反射神経……。キスされると思ってたの?』


顔が離れて、意地悪な顔を浮かべる折部くん。


『思ってるわけないじゃん!いきなり何するの!』


『俺、お前のことすげぇ嫌いなんだよ。

……お前の全部をぶっ壊してやりたい』


『はぁ?』



あの時はムカついたけど、私を嫌う理由に心当たりがある。


『嘘つき』って言った。

つまり、手紙を出すと嘘ついた私を許していないんだ。


……それでも、ぶっ壊してやりたいからってなんでキスしようとするわけ?


その件に関してはマジでキレてる。


モテるってことはキスの1つや2つ、なんとも思ってないんでしょうけどね。

私は好きな人のために純潔を守り抜いているんだ。


よく守ったって褒めてほしいくらい。



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