妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「気持ちはわからなくもないよ。ずっと待ってるなんて言われると、無視しても気になっちゃうだろうし」


「はぁ……。

よし、とりあえず行ってみる。それで用件だけ聞いて、逃げる」


「大丈夫?」


「うん。2人きりにはならない、いざという時にはお兄ちゃんに連絡する!」


拳を作って、そう心に誓う。


兄には折部くんのことを話していないので頼るのは癪だけど、こういう時に頼りになるのって皮肉にも兄だと思う。


「気を付けて」


「行ってきます」


雨が降る前に、と駆け出した私。



しかし。

突然、手首に外部から力が加わって、足を止めた。


前に進もうとして急に後ろから引っ張られたので、少しよろける。


ビックリして振り返ると……、

不満そうな表情をした時原が私の手首を掴んでいた。


「……どこ行くの?」


時原にしては低い声。


表情と声から、不満だけじゃなくて焦りと怒りも見える。


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