妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「誰を待っているんですか……?」


「……っ。三つ葉ちゃんの知らない人だよ」


忘れ物と言っていたのに探るような目を私に向けてきたから、反応が遅れてしまった。


それが、怪しく思えたみたい。



「嘘つかないでください。時原先輩ですよね」


確信を持った口調で、時原の名前を出された。

思わず眉間に力を入れる。


「嘘ついてないよ」


「今だけじゃありません。先輩、時原先輩のこと友達だって……。

なんとも思ってないって言ったじゃないですか!」


はい?


信じられない言葉が聞こえてきて、自分の耳を疑いたくなった。


“なんとも思ってないって言ったじゃないですか”

だけど、一言一句聞き漏らさなかった。


……私、そんなこと言ったっけ?

思い返しても、覚えが一切ない。



三つ葉ちゃんから時原のことを直接問われたのは1回だけ。


部活の用具等を洗っている時。


時原と仲が良いと言われて『友達』だと答えた私に……、

『ほんとにそれだけですか?』と聞いてきた。


でも、それ以上は聞かれてないし、答えてもいない。

だって、私が言葉を遮ったんだから。


……やっぱり言ってないよね?



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