妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「あ、真崎が後輩を泣かしてる!」


耳を貫いた言葉。

咄嗟に顔を上げれば、こちらに近付いてくる集団が見えて……それが男バスの2年生だとわかる。


「後輩泣かせんなよな」


「真崎、キツイところあるし」


「なっ!ちが……っ」


否定しようとして、その中にいた時原と目が合った瞬間。言葉を切った。


まるで私が悪者みたいな状況。

全身の体温が顔に集まる感じがして、つい顔を伏せた。


三つ葉ちゃんのすすり泣く声が妙にはっきり聞こえる。


私だって泣きたい。

ここから走り去りたい。


だけど、逃げ出せば私は完全に悪者だ。


足が動かない。



「何も知らないくせに勝手なこと言ってんじゃねぇよ!」



突然、空気を裂くような叫び声が背後から聞こえた。


あまりに凄みのある声だったので勢いよく顔を上げて振り返れば……。

そこにいたのは、強く睨みを利かした折部くんだった。



折部くんは、動けないでいる私の手を取ると、その場から連れ去ってくれた。


この手を離さないといけないのに、震えて力が入らない。


あの意地悪をした折部くんとは思えないほど、その手は優しかった。


そのまま折部くんに引っ張られて、私たちは学校を出た。



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