妹を溺愛する兄が先に結婚しました
……だけど、もう手遅れ。


「でも、ごめんなさい。私、好きな人がいます」


「ん、わかってる。頑張れよ」



もしあの時、私が告白できていたら。

お兄ちゃんに手紙を渡していなかったら。

今でも送り続けていたら。


“もしあの時”なんて挙げたらキリがない。



「……にしても、あの後輩の女。面倒くさそうだな」


小さく息を吐いて、折部くんが腕組みしながら調子を戻した。


「後輩の女って、三つ葉ちゃんのこと?」


「途中からしか聞いてないけど、超自分勝手だったじゃん」


「うん、まあ……でも、私もあれくらい自分勝手になれたら、ずるいなんて言われないのかな」


「お前も充分自分勝手だろ。昔、俺に話しかけてた時なんて煩わしかったもんな」


くしゃっと顔を緩めた折部くんの笑顔は、昔好きだった笑顔のままだった。



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