妹を溺愛する兄が先に結婚しました
***



頑張って、と爽に後押しされて駆け足で部室を出た。


練習が終わった後、先に練習を終えていた時原から【校門で待ってる】というメッセージが入っていた。


約束して一緒に帰るのは初めてなので、なんだかカップルみたいと浮かれそうになる。


この数十分後にはフラれるかもしれないのに……。



廊下を駆けて、下駄箱に着いた。

その時。


「結咲?」


前から歩いてくる人物に声をかけられた。


……げっ。

今ここで、会うか……。


こんなところで兄に出くわす自分の運のなさを悔いる。


「……さようなら」


話しかけないで、という意味を込めてそう言ったけど。


「1人で帰るの?」


そんなのお構いなしに兄が話しかけてきた。


今日は男バスの練習に顔を出していなかったので、服装はスーツのまま。

だけど、ジャケットを開け、ネクタイを緩めて少し着崩している。


家に帰ってきた後はこんな感じだけど。

……って今はどうでもよくて。


「ううん。爽と一緒だよ。先に出て待たせてるから、もう行くね」


咄嗟に吐いた嘘。


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