妹を溺愛する兄が先に結婚しました
いつもは兄に通じないとわかっているから嘘つくことがないけど、今は一刻も早くその場を離れたかった。


1人って言えば、必ず送るって言ってくる。それなら。

……と思って爽を利用させてもらった。


バレていませんように、と心の中で祈りながら。

背を向けた。


────パシッ。


けど、いつの間にか距離を詰めていた兄に腕を掴まれた。


「な、なに……?」


「いや……、なんか行かせちゃいけない気がする」


真顔でとんでもない勘を発揮してくる兄。

怖いんですけど……。


「離してよ。待たせてるから急がないと」


相手は爽じゃないけど、それに関しては本心から出た言葉。


ここは強行突破。

ぐるんと腕を回して、兄の手を強引に離した。


疑ってはいないようで、さっさと靴に履き替えた私をそれ以上引き止めることはしなかった。



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