妹を溺愛する兄が先に結婚しました
誰もいなくなった空間を見つめながら、俺は重いため息を吐く。


絡み合う想いは、正直、面倒くさい。


こんなことなら最初から誰も好きにならない方が楽。


元々、俺はそういう人間だったはず。


三角関係とか不毛な恋とか、絶対的に避けたい出来事。


面倒くさい関係。操れない心。どうにもならない息苦しさ。

そんなものに、最初から足を踏み込まなければいい。


誰かを好きになるのも、誰かから好かれるのも。

全部、俺にはいらないって。


言えたらいいのに。



そうならないのが“心”だって、爽の時に思い知った。



***



和奏と真崎には、

『3人でいる時間が大切だから関係を壊したくない』って言った。


それは本当のことだけど、少し綺麗な言い方だったと思う。


醜い見方をするなら。

“好きになっちゃったものは仕方ない
だから、もうこれ以上の面倒事は御免だ”



そんな俺だから。


真崎から『好き』って言われた時。

正直……なんで?って思った。


なんで、こんな俺なんかを好きになるんだろうって……。


いいところなんて何もない。

それを改善しようとも思わない。


自分を好きじゃない俺は、自分に向けられる好意を疑った。



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