妹を溺愛する兄が先に結婚しました
保健室で眠ったあの日。


俺は、夢を見た。


「私、時原のことが好きだよ」

泣き顔を俺に向ける真崎。


だけど、次の瞬間。

笑顔に切り替わって。


「でも、もう好きじゃない。じゃあね」


そう言って走り去る真崎の背中を、俺は見送っていた。


ふと。

彼女が走って向かう先に、男らしき人影が見えた。


俺は引き止めようと、足を踏み出したけど。

自分の身体が鉄の塊にでもなったんじゃないかと疑うほど、重くて身体が動かなかった。


夢の中では、走って走っても進んでいる感じがしない。

その現象がまさに起きていたのに、それが夢だと疑わなかった。



だから、目が覚めた時。

白い天井とツンとした薬品の匂いで、夢だということに気付いた。


……嫌な夢を見た。


それからしばらく、その場を動けなかった。

寝不足で寝てスッキリしたはずなのに。



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