妹を溺愛する兄が先に結婚しました
6時間目終了のチャイムが鳴った後。

和奏からメッセージが入って、返信の文字を打っていると


「起きてたの?」

という声がした。


振り向いたら、そこに真崎がいて。


「あ、真崎。おはよう」


そう答えながら俺はすごく安心した。


「帰らないの?」


真崎の顔を見て、わかった。


「俺さ……、真崎を待っていたのかもしれない」


動けなかったんじゃない。

動きたくなかったんだ。


誰かの下へ走り去っていく真崎が、

もう一度、俺のところに戻ってきてくれないかなって。


俺が引き止めるんじゃなくて。

その足で俺のところに走ってきてほしい。


だから、真崎が来てくれて安心した。



嫌な夢を見たことを真崎に話した。


死ぬ夢だとか、神隠しとか。

怖いことを口にする真崎だったけど、「俺の前からいなくなる」と伝えると、少しホッとした様子を見せた。


……死ぬのも怖いけど、俺としてはいなくなるのもすごく怖いんだけど。


そう思っていた俺に。


「いなくならないよ」


真崎の笑顔が届く。


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