妹を溺愛する兄が先に結婚しました
その笑顔を見た瞬間。

俺に抑えられない衝動が走って。


気付けば、彼女を抱き締めていた。



無理に笑顔を作って強がる真崎を切なく思って抱き締めた合宿の時とは違う。


これは完全に邪な感情。

ただ彼女に触れたかった。


真崎に対する思いは、味方という存在だから特別に感じているだけ?


……違う。


真崎が特別なのは、味方だからじゃない。



俺が、真崎を好きだからだ。



真崎を抱き締めながら、いつの間にか自分の中に芽生えていた恋心を自覚した。



***



「昨日、夏目がうちのクラスに来て、静也を探してたんだけど」


翌朝。

登校途中で和奏と会った。


「うん。保健室に来たよ」


「やっぱり。話があるみたいだったけど、なんだったの?」


「文化祭を一緒に回ってほしいってお願いされた」


「え、それって……。静也のことが好きなんじゃ……」


恐る恐る和奏が口にした。

話を聞けば、誰でもその可能性に行きつく。


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