妹を溺愛する兄が先に結婚しました
***



今にも雨が降りそうな天気。


「今日は爽と帰るの?」


「いや。約束はしてない」


部活終わりに和奏と校舎を歩いていると、ふと。


真崎の声が聞こえてきた。


「……よし、とりあえず行ってみる。それで用件だけ聞いて、逃げる」


「大丈夫?」


「うん。2人きりにはならない、いざという時にはお兄ちゃんに連絡する!」


「いってきます」と言って駆け出した、真崎。



なんの話かはわからない。

用件とか、2人きりにならないとか、お兄ちゃんに連絡するとか。


単語は耳に入っても、文章として理解はできなかった。


それでも俺は、ダメだ、と思った。

行かせてはいけない。


その真崎の背中は、誰かの下へ駆けていく夢の中の真崎と重なった。



俺は、真崎が足を踏み出すより早く、彼女を追いかけた。


「あれ、静也?」


前を通り過ぎた時に聞こえた爽の声を無視して。


真崎の手首を掴んで引き止めた。



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