妹を溺愛する兄が先に結婚しました
***
雨が降って、真崎家で夜ご飯をいただいたその日の帰り道。
真崎先生に送ってもらうのはありがたいけど、その車内は会話も音楽もない静かな空間。
普段は沈黙が気にならない俺も、今日この時に限っては空気を破りたい気分になった。
雨のせいで車窓の外は歪み、ネオンだけが景色を描く。
視線は外を向いたまま、ふと呟く。
「折部って覚えてますか……?」
小声でも先生の耳に届いたようで、
「折部?誰それ」と聞き返された。
「真崎の……、手紙の」
「……あー、思い出した。けど、なんで時原が知ってるんだ?」
“手紙”という単語だけでわかったようだった。
「真崎に聞きました」
「あっそ」
興味なさげに先生が言葉を漏らしたきり、また会話が途切れた。
というより、先生は俺の言葉を待っているようで。
俺は言うか言わないか迷って口を噤んだので、静かになった。
雨が降って、真崎家で夜ご飯をいただいたその日の帰り道。
真崎先生に送ってもらうのはありがたいけど、その車内は会話も音楽もない静かな空間。
普段は沈黙が気にならない俺も、今日この時に限っては空気を破りたい気分になった。
雨のせいで車窓の外は歪み、ネオンだけが景色を描く。
視線は外を向いたまま、ふと呟く。
「折部って覚えてますか……?」
小声でも先生の耳に届いたようで、
「折部?誰それ」と聞き返された。
「真崎の……、手紙の」
「……あー、思い出した。けど、なんで時原が知ってるんだ?」
“手紙”という単語だけでわかったようだった。
「真崎に聞きました」
「あっそ」
興味なさげに先生が言葉を漏らしたきり、また会話が途切れた。
というより、先生は俺の言葉を待っているようで。
俺は言うか言わないか迷って口を噤んだので、静かになった。