妹を溺愛する兄が先に結婚しました
雨の道を走る車の音が妙に耳に響く。


通り過ぎるテールライトが時折差し込んで、降りしきる雨を照らす。


どうしてここまで風景や音に敏感になっているのか。

その正体は、たぶん焦り。


折部の存在。そして、抑えられない衝動。


どうにか一歩。現状を変えたい。



だから俺は、呑み込んだ言葉を吐き出した。


……真崎、ごめん。

と心の中で謝りながら。


「先生がどうにかしてください。

……折部、真崎を恨んでいるみたいです」


真崎は先生に頼るつもりがないみたいだけど、俺はやっぱり真崎が背負い込むことじゃないと思う。


不意に車が乱暴に止まった。

ずっと穏やかな運転をしていたのに……と思って前を見たら、単に赤信号で停止しただけだった。


その際、バックミラー越しに先生と目が合った。


鋭い眼光。

詳しく話せと目で訴えている。


俺は、言葉を選びつつ真崎から聞いた話をした。

さすがに迫られたことは血を見そうで言えなかったけど。


今日、呼び出されたことも話した。


話しているうちに信号が青になって、発車する。



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