妹を溺愛する兄が先に結婚しました
駅の反対側は、商業施設がいくつもあり、学校終わりの学生やカップル、ビジネスマン、親子など……平日にも関わらず、賑わいを見せている。


いつもは爽や女バスのみんなと遊びに来ていたけど、今日は、街で見かける度に憧れていた“カップル”として来られた。


……浮かれすぎないように。

と心の中で唱えている時点で浮かれている。


「結婚祝い、だよね。どういうものがいいんだろう?」


「調べてきたけど……。お揃いのグラスや箸、フォトフレームやアルバム、お花、本、メッセージカード。結構いっぱい出てきた。後は、気持ち……?」


「ふふっ。気持ちね」


「値段がわからないからとりあえず見て回ろうかなって……いいかな?」


「いいよ」


隣を歩く時原は、いつもと変わらないはずなのにいつもと違って見える。


淡々とした低温な態度の中に、優しさとか穏やかさがいつも以上に溢れ出ている気がする。


付き合って関係が大きく変化したわけじゃないけど、そうした何気ない意識の変化が心地よくて温かくて好き。


ゆっくりゆっくり進んでいく──それが私たちの関係。



数店舗見て回って、いくつかに絞った頃。


一旦外に出た私たちは、いいなと思った物がどこの店舗にあったか忘れていた。


「あっちじゃない?」


「うーん……、どうだったかな。とりあえず行ってみよっか」


気付けば、時原のマイペースさが私にも移っている。



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