妹を溺愛する兄が先に結婚しました
とその時。


──っ!

「わっ……どうしたの?」


急に立ち止まった私に時原がぶつかった。


ごめん、という言葉が出ない。


しゃがんで植え込みに隠れた私は、そろりと身を乗り出し。

一瞬、視界に入った人物を確認する。


……やっぱり。


「あ、真崎先生だ」


上から焦りのない声が落ちてきた。


見上げると、身を隠さそうとしない時原がいて。

バレるバレる……!と裾を引っ張ってしゃがみ込ませた。


背中に時原の視線を感じながら、もう一度身を乗り出して確認する。


長身かつ爽やかイケメン顔で道行く人の視線を集めているスーツ姿の兄。


その隣にいるのは……、


「誰だろ……?」

ゆかなさんではない、女性だった。


茶髪のロングヘアをくるくる巻いて、耳にはいくつものピアスが輝いている。

胸元が大きく開いた服と美脚を見せつけるタイトスカートを着るその女性は、兄の好みは知らないけど、どう考えてもゆかなさんとは真逆のタイプ。


女性といるからといって、イコール不倫だとか浮気だとか思わないけど……。


兄は、腕に絡みつく女性の手を離そうとしなかった。


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