妹を溺愛する兄が先に結婚しました
俺は酔っていた。


いつもより酒が入っている自覚はあったけど、まだ意識はあるし、呂律も回っている。


だけど、こんなことを口にするなんて。

……やっぱり自分を保てなくなるくらい酔っているのだ。


「好きで結婚したわけじゃねぇよ……。あの時はこれしか方法がないと思ったから」


「ん?どゆこと?……弱み握られて結婚を迫られでもした?」


「違う。俺もゆかなも、お互い好きで結婚したわけじゃないってこと。そもそも付き合ってすらないし」


「あれか、交際0日婚!」


精神が死んでいる時に酒で誤魔化そうとするもんじゃないな。

余計なことが口から出るのを、止められない。


俺は、何も考えず話し始めた。


「元々結婚する意志はなかった。


ゆかなの家ってすげぇ厳しくて……まあ、所謂古い風習が残る家で、親が勝手に決めた婚約者がいたんだよ。

結婚して相手の家庭に入り、仕事はやめなきゃいけない。

でもゆかなは、今の仕事が好きでずっと続けたいと思ってた。


だから、提案したんだ。俺と結婚すればいいって……」


「なんでそんな考えになるの?」


「それが1番手っ取り早いと思ったから。先に俺と結婚すれば婚約者と結婚しなくて済むし、仕事も続けられる」


「いやそれでも……結婚だよ?お前自身の気持ちはどうなの」


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