妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「もう、やだ……っ」
すべてを忘れたくて、職場の先輩が紹介してくれたバーのカウンターで、1人で飲んでいた。
ふと口から漏れた弱気。
それを呑み込むために、ギムレットを口に流し込もうとした時だった。
「飲み過ぎ」
後ろから伸びてきた手にグラスを取られた。
トロンとした目を向けると、そこにいたのは容貌の優れた長身の男性。
見覚えがあるけど、お酒のせいかすぐに思い出せない。
男性は、ギムレットを私から遠ざけながら横に座った。
その際、ふわっと香水らしき匂いが鼻を刺激した。
「ったく……。お前、そんな酒強くねぇだろ」
呆れるように言った彼の口調は、かなり私を知っている様子。
……だけど、ごめんなさい。
「あの……、どちら様でしたっけ?」
「真崎 桜太」
真崎 桜太──名前を聞いてすぐ思い出した。
同じ大学だった人だ。学部もサークルもゼミも違ってほぼ関わりはなかったけど、共通の友達を通じて何度か一緒に飲んだことがある。
「久しぶりだね。こんなところで、どうしたの?」
「さっきまで飲んでたんだよ」
チラッと後ろを見た桜太くん。
そういえば、さっきまで後ろのテーブル席で男女グループが飲んでいたっけ。
そっか。だから、香水の匂いがしたのか。
すべてを忘れたくて、職場の先輩が紹介してくれたバーのカウンターで、1人で飲んでいた。
ふと口から漏れた弱気。
それを呑み込むために、ギムレットを口に流し込もうとした時だった。
「飲み過ぎ」
後ろから伸びてきた手にグラスを取られた。
トロンとした目を向けると、そこにいたのは容貌の優れた長身の男性。
見覚えがあるけど、お酒のせいかすぐに思い出せない。
男性は、ギムレットを私から遠ざけながら横に座った。
その際、ふわっと香水らしき匂いが鼻を刺激した。
「ったく……。お前、そんな酒強くねぇだろ」
呆れるように言った彼の口調は、かなり私を知っている様子。
……だけど、ごめんなさい。
「あの……、どちら様でしたっけ?」
「真崎 桜太」
真崎 桜太──名前を聞いてすぐ思い出した。
同じ大学だった人だ。学部もサークルもゼミも違ってほぼ関わりはなかったけど、共通の友達を通じて何度か一緒に飲んだことがある。
「久しぶりだね。こんなところで、どうしたの?」
「さっきまで飲んでたんだよ」
チラッと後ろを見た桜太くん。
そういえば、さっきまで後ろのテーブル席で男女グループが飲んでいたっけ。
そっか。だから、香水の匂いがしたのか。