妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「俺は、ゆかなのやりたいことに口出ししない。仕事を続けていいし、好きな奴を作ってもいい。家のことで俺が必要なら利用してくれて構わない。

……ま、選択肢の1つだからな。返事はよく考えてからでいい」


そう言って桜太くんがギムレットを私の前に戻したので、ぬるくなったそれを飲み干し、出かかった言葉を呑んだ。


ほんとはすぐにでも返事してしまいたかった。

首を縦に振ってしまいたかった。


桜太くんはお互いに条件を出して対等なフリをしてくれたけど、どう考えても桜太くんに負担のかかる条件ばかり。


こんな優しい人を、巻き込んでいいの……?


「……もし、その条件でいいよって言ったら、桜太くんはほんとにそれでいいの?……私、家のことでほんとに桜太くんに迷惑をかけてしまう」


私の心を決めたのは……。


「誰に迷惑をかけるか、って話だろ。弟や妹か、俺か。

そうやってボロボロになるくらい背負い込むなら、誰かに迷惑かけてみろよ。……俺はそれでもいいから提案したんだ」


桜太くんのその言葉だった。



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