妹を溺愛する兄が先に結婚しました
2人でバーを出て、ふらつく私はタクシーに乗せられた。


「……あの、ありがとう」


何か言おうと、口に出たのは感謝の言葉。


桜太くんは少し不思議そうに首を傾げたけど、穏やかな笑顔を見せた。


「気をつけろよ」


「……っ」


行き先を伝えて、桜太くんに見送られながらタクシーが走り出す。



揺られる車内。

スカートを握り締めた私は、強く誓った。


……もし、彼と結婚することになっても、絶対好きになってはいけない。


その想いは彼を困らせるだけだ。

だから、自分の中に生まれた感情の芽を踏み潰した。


私が桜太くんに正式に返事をしたのは、それから2日後だった。



***



両親に桜太くんのことを伝えたら、案の定、激怒。


「だらしがない」「立場を(わきま)えろ」「言われた通りにしろ」……厳しい言葉で叱咤された。


その言葉が桜太くんにも投げつけられるくらいなら、私が受け止める。

どんなに蔑まれても耐えられた。



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