妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「ゆかなさんは、ほんとにお兄ちゃんのことが好きじゃないんですか?」


まるで……私の心の奥へ繋がる隙間を、寸分の狂いもなく針で通すような言葉。


どうしてわかったの……?

どうして私の気持ちが……。


と思ったところでハッとする。


どうしてって、なに?
わかったって、なに?


私は桜太くんのことなんとも思ってない。


「好き、じゃないよ」


「そうなんですね」


がっかりして肩を落とした結咲ちゃん。


「どうして、そんなことを聞くの……?」


「私……、お兄ちゃんにも自分のことを考えてほしい。もし、ゆかなさんがお兄ちゃんのことを好きなら、私のいない人生を見せてあげてほしいと思って」


……あ、ただ単に私の気持ちを確かめたかっただけか。


「それに私……」と結咲ちゃんは話を続けた。

「好きじゃなくても、お兄ちゃんにとってゆかなさんは特別なんじゃないかと思う」


「……なんで?」


「私のことを考えるなら結婚しないのが1番のはず。……それでもゆかなさんに結婚を提案したってことは、少なからず何かしらの想いがあったからじゃないかなって」


丁寧に紡ぐ結咲ちゃんの言葉を聞いて、ツーと温かいものが頬を伝った。


瞬きをすると、ひと粒またひと粒と落ちていく……涙。


溢れ出るそれを手で(すく)った。


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