妹を溺愛する兄が先に結婚しました
家に帰る前に、最寄り駅の傍にあるケーキ屋さんに寄る。


白色と水色を基調とした小さなケーキ屋さん。兄の昔馴染みの店らしく、誕生日なんかもここでケーキの予約をしている。


私が来るのは初めて。


カランと可愛らしい音を立てて店内に入ると、ふわっと甘い匂いに包まれた。


「いらっしゃいませ」


若い女性の甲高い声が響いた。


「すいません、予約していた真崎ですけど……」


「あ、はい。お待ちしてました」と店員さんが奥からケーキを持ってきた。


「確認お願いします」


「わあ、可愛い!」


砂糖菓子が乗ったクリスマス仕様のホールケーキ。

毎年同じものだけど、毎年見る度に可愛いと声に出てしまう。


店員のお姉さんがレジを打ちながら、ふと。


「桜太の妹の結咲ちゃんだよね?」

と声をかけてきた。


「え?」


顔を上げると、確かに見覚えのある顔だった。

ただ、知り合いではないし、会ったこともない気がする……。


「あたし、桜太と同じ中学だったの。最近、久しぶりに会って妹のこと聞いたから」


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