妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「……あ、思い出した。この前、カフェの前でお兄ちゃんと一緒にいた」


そうだ。

時原と放課後デートなるものをした時。


カフェの前で兄と腕を組んでいた女性だ。

髪を結っていて、ピアスもしていない。服も化粧も違うから全然気付かなかった。


派手な人だと思っていたけど、話してみれば気さくな可愛らしい印象の女性。


「カフェ……?ああ、あの時ね。桜太がケーキを予約するの忘れてたって泣きついてきたから、

デートしてくれるならいいよっていう交換条件でデートしてたのよ。……ま、その後、日向も来たけど」


「日向さんとも知り合いなんですね。……あの、兄と付き合ってるわけじゃ、ないんですよね?」


恐る恐る聞いた。


「え⁉ないない。……だって、あたしも結婚してるし」と左の薬指に光る指輪を見せてきた。

「デートって言っても、ただ一緒に遊んでただけだから」


そういや、兄の昔の知り合いって軽い人が多い……と日向さんから聞いたことがある。


女性と腕を組むことも普通なのかな。

私の前に女性を連れてきたことがないから知らないけど。


とりあえず不倫ではなかったことにホッとする。



***



家に帰って、昼ご飯を食べた後。

母が「ちょっと出かけてくるね」と言って家を出たので、私と時原は私の自室へ移動した。


明るいベージュと淡いミントグリーンのシンプルな部屋。

ベッド、ローテーブル、勉強机、タンス。後はちょっとした小物雑貨が置いてあるのと漫画の本棚があるくらい──たぶん普通の部屋。


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