妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「俺って、そんなに感情が出る方じゃないけどさ……。眠いわけないからね」


「……──っ!」



突然、時原に抱き締められた。


伝わるのは熱と……胸の鼓動。


ドクンドクンと鳴る心臓音が伝わるほど、時原の鼓動が速かった。


「わかるかな……?俺、結構緊張してるの。眠くなるわけないから」


「……っ。時原、死んじゃう」


「うん。死んじゃうほどやばいね」


それは、私以上にドキドキしている証拠だった。



私はゆっくりと時原の背中に腕を回した。


嬉しい。

時原でもドキドキすることがあるんだ。


いつも淡々としていて、表情が少なくて。

マイペースで無気力で、掴みどころがないから。

……わかりにくい。


だけど、時原も私と一緒。


ドキドキすることもあれば、身体が熱くなることも、照れて顔が赤くなることもある。


想われているってわかる、その全部の行動が──愛おしい。



つい手に力がこもって、服をぎゅっと掴んでしまった。


「真崎?」


名前を呼ぶ声がすぐ傍からして、耳をくすぐる。



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