妹を溺愛する兄が先に結婚しました
……大丈夫。

そう自分に言い聞かせて、私は時原から離れた。


「……どうしたの?」


私を覗くように見る時原の顔が少しだけ困っている。


たぶん、なんとなく感じたんだ。

私を取り巻く空気が変わったことを。


……私をずっと見ていたいって言ってくれたもんね。


その言葉を信じるよ。



大丈夫。

今日1日、たくさんの幸せをもらった。


今日だけじゃない。今までもたくさんの嬉しい思い出をもらった。


これだけもらえば大丈夫。


傷付くことになろうと、私は大丈夫。



『この傷、時原に見せられるか?』


兄にそう言われた日から決めていたことがある。


隠し続けてきた傷を、いつか見せる時が来るかもしれない。


いつかの日のために覚悟を決めないと。


……でも、いつかっていつ?

それってまだ覚悟を決めていないってことなんじゃ?


目を背けないって言った。


いつか来る日のため……じゃなくて、いつかは自分で作る。



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