妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「えーっと、これは……ぶつけたとかそういう傷ではなくて。

昔、お母さんが再婚する前ね……私、お父さんから暴力を受けてたの。その時の傷がまだ残っていて……、これでもたいぶ綺麗になった方なんだけど」


言葉を紡いでいく私の目がだんだんと熱くなる。


「……それでもやっぱり、見ていて気持ちのいいものではないかなって。もしね、私の傷が気持ち悪くて嫌だったら、言ってほしい」


下唇を噛んで、震えを抑える。


秘密を口にする怖さ。傷を見せる怖さ。

それに混じって、少しだけ下着姿を見せる恥ずかしさ。



すると。

時原の顔が見れなくて俯いていた私の肩に、脱ぎ捨てたシャツがかけられた。


「……っ」


ビックリして顔を上げると、時原の悲しそうな表情が瞳に映った。


……やっぱり見苦しかったかな。



だけど、次の瞬間。


時原の身体が重なって、力強く抱き締められた。


「──っ⁉」


「なんで話したの?」


「ごめっ……」


「違う、責めてるんじゃない。なんで、って聞いてるだけ」


時原の低い声に身体がビクッとなる。


涙が出ないように必死に抑えて、素直な気持ちを吐く。



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