妹を溺愛する兄が先に結婚しました
しばらくして落ち着いて、離れる。


「ごめんね……ありがとう」


「うん」


涙を拭きながら……視線を下にズラして、ハッとする。


──っ!

普通に恥ずかしい恰好をしている……!


シャツの隙間から見える胸。

改めて大胆なことをしたと気付く。


慌ててインナーシャツを着ようとして……。


「真崎」


呼ばれて顔を上げると、時原と目が合った。

どこか余裕がなさそうな時原の表情……。


刹那。

視界がぐるんと揺れた。映るのは、天井。


パニックになる私が唯一理解できたのは、押し倒されたということ。


時原の影が重なって……。


「覚えておいて」


鋭い声が耳を貫いた。



そして、唇に柔らかいものが触れた。



……っ!?

唐突に熱が触れて、伝染したように全身がわっと熱を帯びる。


それは、時庭の唇だった。


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