妹を溺愛する兄が先に結婚しました
~Side 桜太~



「結咲ちゃん放っておいていいの?」


まだツリーに夢中な結咲たちから離れたところのベンチに座るゆかなの隣に、俺も腰を下ろした。


「……結咲が喜ぶならなんだっていいよ」


「そっか。……でも、なんで私も連れてきたの?」


「一応、結婚記念日だからな」


足を組み、ズボンのポケットに手を突っ込んで、寒さを凌ぐ。


反応がないのを不思議に思って隣に視線を移してみれば、ゆかなは目を見開いて俺を見ていた。


目が合って……あからさまに逸らされる。


「……なに?」


「いや……覚えていたのがちょっとビックリで」


「当たり前だろ。ちゃんとそれっぽく見えるように、わざわざイブの日に婚姻届を出したんだから」


「そうだったね」と苦笑を浮かべたゆかな。

俯いて、言葉を続ける。


「桜太くんは、どうして……あの時、私に声をかけたの?」


「あの時?」


「バーで……」


……ああ、バーでゆかなが飲んでいた時のことか。

改めて聞かれるとは思っていなかった。


「……覚えてるかわかんねぇけど」そう前置きして口を開いた。


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