妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「俺、昔から妹のことで揶揄われることが多かったんだよ。別に気にしてなかったけど……。

でも一度だけ、『妹さんを大切にしているところが1番の魅力だね』って言われたことがあった。

後にも先にもそんな風に言われたのは初めてで。……あれ、結構嬉しかった」


「……?」


「それ言ったの、お前だよ。……だから、死にそうな顔で飲んでるゆかなを見て、つい気になった」


「そう、だったんだ……っ」


「……──っ⁉」


思わずギョッとしたのは、ゆかなの瞳から涙が落ちたから。


「え、どうした?今のどこに泣く要素があった?」


「ちが……っ。ごめん、嬉しくて……」


嬉しくて……泣くのか。

ちょっと意外だった。


いつも1人で抱え込んで、平気なフリをする姿しか見ないから。



俺はポケットからハンカチを出して、視線を外しながらゆかなの前に差し出した。


「……え?」


「使えば?」


「……やだ」


「はぁ?」


まさかの拒否に、不満を含んだ声が漏れた。



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