妹を溺愛する兄が先に結婚しました
***



ある日の昼。


友達が誰も捕まらなかったので、その日、久しぶりに家に帰ることにした。


親父も義母(かあ)さんも働いているから、昼は誰もいないはず。


持ち歩いている鍵を使って、ガチャッと音を立て開ける。


静かな家。


しかし。


「だぁれ?」


か細い声が聞こえた。


見るとそこには、リビングのドアを少し開けて、寝巻き姿の幼い少女がこちらの様子を窺うように立っていた。


このガキが義妹(いもうと)の結咲。


「あ、お兄ちゃん!」


俺を見るなりパァッと笑顔に変わる。


なんでいるんだ?

と思ったのも束の間。


そういえば、今って夏休みだっけ。


学校へ行ってないとそういう感覚がなくなる。


「おかえり」


と言って、パタパタ走ってリビングに戻る義妹。


しばらく帰ってこなかった兄にも『おかえり』って言うのかよ。


「チッ」


小さく舌打ちして、俺はリビングへ入った。



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