妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「ゆうちゃんの傷、あれは前の夫がつけたものよ。私にも……」


そう言って義母さんは、服を少しめくり上げてお腹を見せた。


そこには、結咲と同じようなアザがあった。


「なんでそんな奴と結婚したんだよ」


「結婚した当初は普通だったの。

だけど、ゆうちゃんが生まれてから段々と暴力を振るうようになって……。

エリートで近所の評判もいい人だったけど、ちょっとのことですぐキレる。

そんな夫が怖くて逆らえなかった」


「…………」


「ごめんね、こんな話。反応に困るわよね。

でも今は、私もゆうちゃんも幸せだから大丈夫よ」


「……あっそ」


“今は幸せ”

そう言われて結咲のあの笑顔を思い出すと、そうなんだろうなと納得する。


「いきなり他人の私たちと家族になって戸惑ってる桜太くんに言うのも申し訳ないけど。

ゆうちゃんには怖い思いしかさせてないから……。

だから、ゆうちゃんのこと、少しでもいいから妹として優しくしてあげてほしい」


「……わかってる」


呟くように答えると、義母さんは小さく｢ありがとう」と言って笑った。



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