妹を溺愛する兄が先に結婚しました
まだ朝の7時ということもあって、登校しているのは朝練がある生徒だけ。


すでに部活着に着替えた何人かの生徒。

その中に、よく見知った顔の先輩を見つけた。


男子バスケ部の2年生、菅原(すがわら)先輩だ。


「すが──、むぐ……っ!」


先輩に声をかけようとして、しかし。


後ろから口を塞がれた。


口を押えられたまま、上を向くと、ニコニコした笑顔で私を見下ろす兄。


笑顔なのに、鋭い目つき。


「朝練に遅れるから“まっすぐ”更衣室へ行きな」


「……っぷは。わかってるよ!」


兄から解放されて、逃げるように立ち去った。


ただ先輩に挨拶しようと思っただけなのに!



***



放課後、女子バスケ部の活動中。


「あーあ。やっぱり朝練と違って、放課後練はいいよねー。真崎(まさき)先生がいるから」


隣の男バスの練習を見ながら、先輩たちが目をハートにする。


目線の先には、男バス部員に指導する兄の姿があった。


教壇に立つ時のスーツ姿と違って、部活用に動きやすいジャージ姿。


真剣な眼差しが女子の心をくすぐる、らしい。


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