妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「い・ら・な・い!」


私はマフラーを兄に突き返し、敢えて時原の手を取って、その場を去った。



振り返らない。


兄がどんな形相で見ているか、なんとなくわかってしまうから。



「真崎?」


カラオケまで戻り、時原に呼ばれてパッと手を離す。


「ごめん」


「いや、いいけど」


兄に見せつけるように手を取ったけど、とんでもなく恥ずかしいことをしたと我に返る。


……手繋いでたよ。


まだ手に残る感触を隠すように、ポケットに突っ込んだ。



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