ここではないどこか
Chapter1
1
嫉妬とは緑色の目をした怪物らしい。
なるほどなるほど、それなら今俺の目も緑色なのだろう。だけど俺はその緑色を隠さなくてはいけない。一筋の光も通さない暗闇に。
だって、姉さんが好きだなんて、そんなの。
「あ、透だ」
俺に気づいた仁くんが姉さんの肩に触れていた右手を上げた。ひらひらと俺に向かって振られる右手を視線で追った姉さんは、その先にいる俺を見て柔らかく微笑んだ。
そして俺の心はまた暗闇に沈む。後悔、そうだ、これは後悔だ。どうして滅多にしない忘れ物をしてしまったのだろう。
▼
「あ、やべ、バッシュ忘れた……」
「まじかよ、練習できないじゃん」
「え?なに、透くんバッシュ忘れたの?」
俺の大きな独り言に智宏と瑞樹が反応した。智宏は俺と同じ高校3年生で瑞樹が一つ下の2年生。あとここにはいない3歳上の仁くんと、4人でblendsというアイドルグループを1年程前に結成した。
俺たちが所属する事務所は大手俳優事務所である。その事務所が新しいことにも挑戦しよう、とした結果がアイドルグループ結成であった。
ダンス?なにそれ、美味しいの?状態の仁くんと俺、幼稚園からダンスしてました!の智宏と瑞樹の4人はある意味でバランスが良かった。
「香澄さんに頼めば?」
なんの気なしに智宏が口に出した姉さんの名前にドキリとした。「かすみさん……?あ、透くんのお姉さんか!」姉の存在だけは知っていた瑞樹が理解をして智宏に賛同する。「うぅん……」と曖昧な笑みを浮かべたが、それしか選択肢がないことはもちろんわかっていた。リュックの中からスマホを取り出してメッセージアプリを開いて祈るように姉さんに文章を送る。
姉さん、どうか家にいないで。
なるほどなるほど、それなら今俺の目も緑色なのだろう。だけど俺はその緑色を隠さなくてはいけない。一筋の光も通さない暗闇に。
だって、姉さんが好きだなんて、そんなの。
「あ、透だ」
俺に気づいた仁くんが姉さんの肩に触れていた右手を上げた。ひらひらと俺に向かって振られる右手を視線で追った姉さんは、その先にいる俺を見て柔らかく微笑んだ。
そして俺の心はまた暗闇に沈む。後悔、そうだ、これは後悔だ。どうして滅多にしない忘れ物をしてしまったのだろう。
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「あ、やべ、バッシュ忘れた……」
「まじかよ、練習できないじゃん」
「え?なに、透くんバッシュ忘れたの?」
俺の大きな独り言に智宏と瑞樹が反応した。智宏は俺と同じ高校3年生で瑞樹が一つ下の2年生。あとここにはいない3歳上の仁くんと、4人でblendsというアイドルグループを1年程前に結成した。
俺たちが所属する事務所は大手俳優事務所である。その事務所が新しいことにも挑戦しよう、とした結果がアイドルグループ結成であった。
ダンス?なにそれ、美味しいの?状態の仁くんと俺、幼稚園からダンスしてました!の智宏と瑞樹の4人はある意味でバランスが良かった。
「香澄さんに頼めば?」
なんの気なしに智宏が口に出した姉さんの名前にドキリとした。「かすみさん……?あ、透くんのお姉さんか!」姉の存在だけは知っていた瑞樹が理解をして智宏に賛同する。「うぅん……」と曖昧な笑みを浮かべたが、それしか選択肢がないことはもちろんわかっていた。リュックの中からスマホを取り出してメッセージアプリを開いて祈るように姉さんに文章を送る。
姉さん、どうか家にいないで。
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