ここではないどこか
▼
「透と香澄さんは本当のきょうだいだよ。血も繋がってる」
とりあえず2人のことを知ることが大事だな、と俺たちの中で透くんと一番長い付き合いである智宏くんに話を聞くと、思いもよらない言葉が返ってきた。
「っえ……!?そうなの!!?再婚なんだろ?」
仁くんも俺と同じように驚いていた。「うーん、俺が勝手に言っていいのか分からないんだけど……」と智宏くんは少し迷う素振りを見せた。
「でもまぁ、隠してるわけでも無さそうだし、いいかな」
そうきてくれないと困る。智宏くんが話し出そうとしたとき「まだ居たのか?早く帰ってくださいよー」とマネージャーがノックと同時に入ってきた。
そう言われれば帰るしかなく、俺たちは控え室を後にした。
▼
気になりすぎる。しかし送りの車の中で話すような内容ではない。俺は悶々としていた。たが過程はどうあれ、透くんと香澄さんが血の繋がっているきょうだいであることは決定している。
そうなると透くんが香澄さんに特別な感情を抱いてるってのは俺の勘違いかー?えー?でもあの表情と目は家族に向けるものじゃあないだろー!!
あ、これは考えてもだめなやつだ。ただ、血の繋がりが発覚したことで、もし万が一俺の勘が当たっていて、そしてそれが世間にバレたら……。俺たちは終わってしまうんじゃないか?それだけが不安で、それだけは何としても阻止しなければいけなかった。
「ねぇ、もしメンバーと同じ人を好きになったらどうする?」
流れる景色を見つめながら仁くんと智宏くんに聞いた。
「えー?なんだよそれ」
突拍子もない質問に智宏くんが笑う。
「いや、もしもだよ。ふと気になって」
重くならないように努めて明るく言うと、仁くんと智宏くんは声を揃えて「諦める!」と言い切った。予想していた通りの答えに、やっぱりなと笑みが漏れる。
「じゃあ、透くんはどうだと思う?」
俺はなんてことないという風に核心に触れた。
「透も諦めそう。というかあいつが何かに執着している姿が想像つかないわ」
「俺も諦めると思うよ」
2人とも俺と同じ考えのようだった。ふわふわと掴みどころのない透くんが、仁くんの言う通り、何かに執着をする姿が思い浮かばなかった。
「そういう瑞樹はどうなの?」
智宏くんに話を振られて、俺は間髪入れずに答える。
「俺は絶対諦めない!何としてでも俺に振り向かせる」
俺が言い切ると、仁くんと智宏くんは声を出して笑った。
「だと思ったわ!」
2人の声が重なった。
▼
送迎の車から降りると、俺は控え室の話の続きを促した。仁くんは「ここで話すようなことじゃないだろ」と止めたが、それは形だけのもののようだった。
そりゃそうだ。仁くんは香澄さんのことを気に入ってる。恋愛感情にまで育っているかはわからないが、"いいな"と思っている人の情報は知りたいと思うのが正常な反応のように思えた。
智宏くんは「エレベーターに乗ったらな」と一応の気遣いをみせた。
「透が赤ちゃんの時に離婚して、また再婚したって。俺もそこまで詳しくは聞いてないんだけど、透はお父さん、香澄さんはお母さんに付いて行って、再婚の話が出るまで自分に姉さんがいることは知らなかったって言ってたよ」
なるほど。あまり聞かない話だと思ったが、確かにそれなら、と納得した。
「そんなこともあるのか。考えてみると香澄さんと透って名前も繋がりがある感じだしな。顔はあんまり似てないけど、ふわふわ足が地に着いてなくてほっとけない雰囲気は似てるわ」
智宏くんの話を咀嚼しきった仁くんも納得したようで、夜に似つかわしくない清々しい声をあげた。
俺は仁くんの話を聞き、また、なるほど、と納得をした。言われてみれば透と澄はイメージの近い漢字だと思った。彼らの苗字に入っている"黒"と正反対のイメージだ。透と香澄さんの両親がどんな願いをもって彼らに名付けたか、それが分かったような気がした。
そしてこの夜、俺は身の振り方を決めた。
「透と香澄さんは本当のきょうだいだよ。血も繋がってる」
とりあえず2人のことを知ることが大事だな、と俺たちの中で透くんと一番長い付き合いである智宏くんに話を聞くと、思いもよらない言葉が返ってきた。
「っえ……!?そうなの!!?再婚なんだろ?」
仁くんも俺と同じように驚いていた。「うーん、俺が勝手に言っていいのか分からないんだけど……」と智宏くんは少し迷う素振りを見せた。
「でもまぁ、隠してるわけでも無さそうだし、いいかな」
そうきてくれないと困る。智宏くんが話し出そうとしたとき「まだ居たのか?早く帰ってくださいよー」とマネージャーがノックと同時に入ってきた。
そう言われれば帰るしかなく、俺たちは控え室を後にした。
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気になりすぎる。しかし送りの車の中で話すような内容ではない。俺は悶々としていた。たが過程はどうあれ、透くんと香澄さんが血の繋がっているきょうだいであることは決定している。
そうなると透くんが香澄さんに特別な感情を抱いてるってのは俺の勘違いかー?えー?でもあの表情と目は家族に向けるものじゃあないだろー!!
あ、これは考えてもだめなやつだ。ただ、血の繋がりが発覚したことで、もし万が一俺の勘が当たっていて、そしてそれが世間にバレたら……。俺たちは終わってしまうんじゃないか?それだけが不安で、それだけは何としても阻止しなければいけなかった。
「ねぇ、もしメンバーと同じ人を好きになったらどうする?」
流れる景色を見つめながら仁くんと智宏くんに聞いた。
「えー?なんだよそれ」
突拍子もない質問に智宏くんが笑う。
「いや、もしもだよ。ふと気になって」
重くならないように努めて明るく言うと、仁くんと智宏くんは声を揃えて「諦める!」と言い切った。予想していた通りの答えに、やっぱりなと笑みが漏れる。
「じゃあ、透くんはどうだと思う?」
俺はなんてことないという風に核心に触れた。
「透も諦めそう。というかあいつが何かに執着している姿が想像つかないわ」
「俺も諦めると思うよ」
2人とも俺と同じ考えのようだった。ふわふわと掴みどころのない透くんが、仁くんの言う通り、何かに執着をする姿が思い浮かばなかった。
「そういう瑞樹はどうなの?」
智宏くんに話を振られて、俺は間髪入れずに答える。
「俺は絶対諦めない!何としてでも俺に振り向かせる」
俺が言い切ると、仁くんと智宏くんは声を出して笑った。
「だと思ったわ!」
2人の声が重なった。
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送迎の車から降りると、俺は控え室の話の続きを促した。仁くんは「ここで話すようなことじゃないだろ」と止めたが、それは形だけのもののようだった。
そりゃそうだ。仁くんは香澄さんのことを気に入ってる。恋愛感情にまで育っているかはわからないが、"いいな"と思っている人の情報は知りたいと思うのが正常な反応のように思えた。
智宏くんは「エレベーターに乗ったらな」と一応の気遣いをみせた。
「透が赤ちゃんの時に離婚して、また再婚したって。俺もそこまで詳しくは聞いてないんだけど、透はお父さん、香澄さんはお母さんに付いて行って、再婚の話が出るまで自分に姉さんがいることは知らなかったって言ってたよ」
なるほど。あまり聞かない話だと思ったが、確かにそれなら、と納得した。
「そんなこともあるのか。考えてみると香澄さんと透って名前も繋がりがある感じだしな。顔はあんまり似てないけど、ふわふわ足が地に着いてなくてほっとけない雰囲気は似てるわ」
智宏くんの話を咀嚼しきった仁くんも納得したようで、夜に似つかわしくない清々しい声をあげた。
俺は仁くんの話を聞き、また、なるほど、と納得をした。言われてみれば透と澄はイメージの近い漢字だと思った。彼らの苗字に入っている"黒"と正反対のイメージだ。透と香澄さんの両親がどんな願いをもって彼らに名付けたか、それが分かったような気がした。
そしてこの夜、俺は身の振り方を決めた。