ここではないどこか
Chapter4
1
香澄さんからオススメされた漫画を空き時間にスマホで読んでいると、「あ、それ話題のやつだ!」とからりとした明るい声が後ろから聞こえてきた。
「近い!」
手元を覗き込む智宏くんの顔が思ったより近くて、驚きに身を捩った。
「あぁ、ごめんごめん」
本気で思っていないような軽い謝罪と共に椅子を引いて俺の横に腰を下ろした智宏くんが、また手元のスマホを覗き込む。
「撮影早かったね。次は透くん?」
漫画を気にしている智宏くんの気持ちには敢えて触れず、俺は仕事の話を振った。デビュー6周年を間近に控えた俺たちは、今日だけで雑誌媒体の取材が10件以上入っていたのだ。
「そうそう。次が最後の取材で、それが終わったらライブの打ち合わせね」
「……ねむいっ!!」
「ならそれ読んでないで寝なよ」
ごもっともだと思ったが、白熱の展開にスワイプする手が止まらないのだ。
「それも香澄さんのオススメ?」
「まぁ……」
「もう2年だっけ?」
「8月で2年半だね」
「……そんなになるかぁ!」
智宏くんは懐かしむように目を細めた。
あの日、俺が香澄さんの特別になってからそれだけの時間が過ぎていた。変わったこと、変わらないこと、それぞれにあるけれど、根っこの香澄さんを想う気持ちだけは唯一揺るがないものだった。
「近い!」
手元を覗き込む智宏くんの顔が思ったより近くて、驚きに身を捩った。
「あぁ、ごめんごめん」
本気で思っていないような軽い謝罪と共に椅子を引いて俺の横に腰を下ろした智宏くんが、また手元のスマホを覗き込む。
「撮影早かったね。次は透くん?」
漫画を気にしている智宏くんの気持ちには敢えて触れず、俺は仕事の話を振った。デビュー6周年を間近に控えた俺たちは、今日だけで雑誌媒体の取材が10件以上入っていたのだ。
「そうそう。次が最後の取材で、それが終わったらライブの打ち合わせね」
「……ねむいっ!!」
「ならそれ読んでないで寝なよ」
ごもっともだと思ったが、白熱の展開にスワイプする手が止まらないのだ。
「それも香澄さんのオススメ?」
「まぁ……」
「もう2年だっけ?」
「8月で2年半だね」
「……そんなになるかぁ!」
智宏くんは懐かしむように目を細めた。
あの日、俺が香澄さんの特別になってからそれだけの時間が過ぎていた。変わったこと、変わらないこと、それぞれにあるけれど、根っこの香澄さんを想う気持ちだけは唯一揺るがないものだった。