闇夜ヨルの恐怖記録 1
☆☆☆

……どうしてうまく行かないんだろう。


目の前に置かれたスポンジケーキはペタンコで、全然膨らんでいなかった。


今から作り直すにしても、もう時間がない。


他のみんなはおかずをどんどんつくって、調理実習室には美味しそうな匂いが立ち込めている。


「どうしたのミハル、大丈夫?」


卵焼きを上手に焼いたマイコが上機嫌で声をかけてくる。


ミハルは咄嗟にスポンジを隠そうとしたけれど、隠せられるような大きさではなかった。


「スポンジケーキ、少し失敗したの?」


「す、少しだけだよ。大丈夫だからほっておいて!」


ミハルはマイコを突き放して包丁を手に取った。


真ん中を横に切って間にクリームとフルーツを入れれば高さがでる。


それでどうにかごまかすしかなかった。
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