闇夜ヨルの恐怖記録 1
その後をついて行こうとしたが、思わず足を止めていた。


トオコは膝を強く打ち付けたようでなかなか立ち上がろうとしない。


顔をしかめて痛みを我慢している。


「セイコ?」


ユウキに呼ばれても、セイコはその場にしゃがみこんでいた。


「大丈夫?」


そう声をかけて手を差し出す。


「セイコちゃん優しい~!」


今までトオコとバカにしていた男子生徒が声を上げる。


「ほんと、可愛くて性格もいいとか、天使かよ」


「付き合いたいよなぁ」


「お前じゃ無理だって!」


そうだよ。


手を差し伸べたのは別にトオコのためじゃない。


ただ、自分の人気を更に押し上げるための演出だから。


自分にそう言い聞かせた。


トオコのことなんて大嫌いだし、助けてあげたいとも思っていない。
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