闇夜ヨルの恐怖記録 1
ユウキは困ったように眉を下げてセイコを見ると、大きく息を吸い込んだ。


「ごめん!」


頭を下げて言うユウキにセイコは微笑んだまま硬直してしまった。


「え、どうしたの? なんで謝っているの?」


聞きながらも嫌な予感が胸をよぎっていた。


これ以上突っ込んだ質問はしない方がいいと、もうひとりの自分が言っている。


「俺と別れてほしい!」


鈍器でガツンッ! と頭を殴られた気分だった。


周囲の喧騒がかき消えて、みなながこちらを見ているのがわかる。


「どう……して?」


さっきよりも声が震えて、聞き取れたかどうかも怪しかった。


「やっぱり俺、セイコよりトオコの方が好きなんだ」


ユウキの言葉に心臓が止まってしまうかと思った。


セイコより、トオコが好き。


そんな、どうしてこんなことになるの?


「ごめんね。私もユウキのことは譲れない」


いつの間にかトオコがやってきていて、ユウキの手を握りしめていた。


ユウキもトオコの手を握り返している。


その手のぬくもりは私だけのものだったはずなのに!!


愕然として近くの机に手をついた。


もう立っているのがやっとだ
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