年上なのに、翻弄されて
「呉羽,僕以外の前でその顔はだめ」



手で来ないでという動作をしながら首を竦めた私の耳に,そんな声が聞こえた。

驚いて反射的に瞑っていた目を開くと,美世ちゃん達が,被せられた何かごしにぼんやりと見える。



蓮の……羽織!?



「あのっ蓮!? 何のつもり……」

「蓮くん! こうなると思って準備運動先に済まさせといたから,呉ちゃん海にも入れるからね!」



蓮に手を引かれるまま走っていると,視界の悪い中,美世ちゃんのそんな声が聞こえた。

意味は……ちょっとよく分からない。



「じゃあ,こっちかな?」

「ぅわっ冷たっ!?」



蓮はじゃぶじゃぶと海に入り,人の少ない方を目指して進んでいく。

その背中をみて,今のうちに言っておこうと思った私は口を開いた。
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