年上なのに、翻弄されて
えと,これを……食べろと?



「はい,呉羽。あ~ん」



蓮は子猫を相手にするような甘い笑みと声でそう促す。



「でも……」

「でもじゃない。呉羽が欲しいがったんでしょ?」



だって……不意打ちで卵焼きを口に入れられた時とは違う。

自分から来いと,蓮はそう言ってる。

一回なら,と思いきって口にいれると,私はあることに気がついた。



「蓮,手,離してくれないと食べれない」



サクッと中途半端なところで食べるのをやめると,蓮は不敵に笑う。



「ふふっそうだね。ちゃんと離すから大丈夫」



その言葉を信じて少しずつ押し込まれるポッキーを食べ進めると,蓮の指に唇が触れそうになった。

驚いて飛び退くと,蓮は残った小さなクッキーの部分を,ほいっと自身の口に放り込んだ。
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