年上なのに、翻弄されて
なね? なねぇ? なねぇぇ?
美世ちゃんの声が頭の中でエコーする。
美世ちゃん,私,もうだめかも……
「蓮,蓮,そろそろ……」
「なぁに? 呉羽。手は離さないけどね?」
なぁにと訊きながら私の願いを分かって先に断ってくる。
「ふふふっ。ねぇ呉羽,たくさんの人が見てるね?」
蓮は嬉しそうにそう言う。
分かっているのに何故離してくれないのか。
とうとう間に合わなくて,たくさんの人の真ん中を蓮と2人で走る。
顔を見られないようにうつむくけど,きっとそれほど効果は期待できない。
「蓮……蓮ってば! 今からでも良いから離して!!」
「ふふっ。呉羽に皆の前で蓮って大きな声で呼ばれるの,いいね」
始終楽しそうだった蓮は,結局学校につく迄手を離してはくれなかった。
そして私は,一躍時の人となったのであった。